現在、我が国の水道は、人口減少化社会に伴い水道料金収入が伸び悩む中、老朽化施設の更新、災害に強い施設の再構築など様々な課題に直面しています。
そうした中、本協会では、全国7地方支部総会の決議を経て提案された、各事業体独自では解決が難しい重要かつ緊急の課題について、令和3年12月1日に開催した第99回総会において、問題解決に向けた討議を行いました。
討議の結果、国に解決を求めるべきとされた問題は、直近の運営会議において陳情文書、陳情先等を諮ったうえ、国会議員・関係省庁に対して強力な陳情を実施し、問題解決に努めていきます。
本ページでは、第99回総会において討議を行った会員提出問題を掲載いたします 。
(東日本大震災関係)
1.放射性物質に係る対応の推進及び東京電力福島第一原子力発電所の事故を原因とする損害賠償について
東京電力福島第一原子力発電所の事故により拡散した放射性物質は、事故から10年以上が経過した現在でも、依然として水道事業運営に多大な影響を及ぼしている。
放射性物質を含む浄水発生土の放射能濃度が8,000Bq/㎏を超える指定廃棄物の処理については、放射性物質汚染対処特措法等において、国が最終処分場を確保して進めることとされているが、それまでの間は、排出者である水道事業者が仮置き保管することとされており、いまだに浄水場等での保管を余儀なくされている。
また、当該事故を原因とする損害賠償については、水道事業者ごとに東京電力ホールディングス(株)との間で賠償の合意形成が必要となっていることに加えて、放射性物質の流入を防ぐための遮蔽、水道水のモニタリング、放射性物質除去効果のある粉末活性炭処理等、放射性物質対策に要した費用の全てを賠償するものとはなっていない。
このため、各水道事業者が経済的な負担を負いながら対応している状況にあることから、原因者である東京電力ホールディングス(株)には、正当な賠償請求全てに対し、誠実かつ速やかな対応が求められる。
よって、浄水発生土の適切な処理等、水道事業を円滑に運営するとともに、国民の不安を一日も早く解消し、健康と安全・安心な生活環境を確保するため、万全な対策を早急に講じることを国に対して強く要望する。
東北地方支部の郡山市より提案理由が説明されるとともに、豊橋市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
水道は国民生活や産業活動を支える重要な基盤施設であり、大規模地震や集中豪雨等の自然災害が発生した場合においても、飲料水等生活に必要な最低限の水を供給することが水道事業者に求められている。
阪神・淡路大震災、新潟県中越沖地震、東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年北海道胆振東部地震をはじめとした地震災害はもとより、平成30年7月豪雨、令和元年房総半島台風及び東日本台風等においても、水道施設は甚大な被害を受け、長期間にわたり国民生活や都市活動に重大な支障を来し、我が国のいずれの地域においても、災害対策は必要不可欠なものと再認識されたところである。
こうした中、発生の確率が高いとされている南海トラフ地震や首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、さらには近年頻発している豪雨災害等への備えとして、水道事業者は、ハード面では管路を始めとした水道施設の耐震性の強化、災害時の給・配水拠点となる配水池の増設、停電・浸水対策の強化、応急給水用資機材や非常用貯水施設の整備等、ソフト面では国が示す危機管理対策マニュアル策定指針を基に、各種マニュアルの作成とともに訓練の実施を鋭意進めている。
令和2年には、「大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ(内閣府)」により、富士山は宝永噴火から300年以上が経過し、いつ噴火してもおかしくない状況であることから、富士山噴火をモデルケースとした降灰予測や測定される影響が示されたところであるが、ひとたび富士山が噴火すると、被害は広域にわたることが想定されており、富士山噴火時における国や水道事業者の連携も必要不可欠となる。
しかしながら、災害対策に要する事業費は、水道事業経営に及ぼす影響が非常に大きいところではあるが、その効果は広く地域の防災機能の強化に寄与するものであることから、財源の全てを水道事業者が負担することのないよう十分な国の支援が必要である。
また、各種補助制度はこれまで随時拡充が図られてきたところであるが、被災後の水道施設災害復旧について、市町村合併の進展と簡易水道事業の上水道事業への統合により、上水道事業の給水人口が増加している水道事業者においては、現行の補助要綱では補助の適用除外となる場合があり、被災時の財政負担が大きい状況にある。
さらに、近年、各種自然災害が懸念される中、水道施設が甚大な被害を受ける恐れがある「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」等に指定されている地域において、災害発生時においても水道がその機能を維持できるよう、災害に対し万全に備えるための水道施設整備が急務とされているが、普通会計債の防災対策事業債及び緊急防災・減災対策事業債について、水道事業が対象となっていないことから、必要な水道施設整備の財源措置として不十分な状況にある。
加えて、水道施設等が被災した際に、直ちに復旧し水道水供給を確保するためには、発災時に速やかに予算執行可能とする仕組みを整え、機動的に対応する必要性があるが、現行制度の下における補正予算等による対応は手続きに一定期間を要することとなる。さらに、復旧に係る費用の財源確保のためにも、災害に備えた引当金の計上が認められるよう制度の見直しが必要であると考える。また、被災した施設・設備の残存価値はゼロになり、当該年度において多額の除却損が発生することになることから、災害損失の繰延資産への整理が必要と考える。
災害救助法においても、求償対象とする飲料水の供給については、給水所において直接被災者に供給するものとされており、福祉施設の貯水槽に飲料水を供給し、飲用のほかトイレ等の生活用水として使用する場合のように、施設にて対応するものは災害救助法に基づく求償対象外とする内閣府の見解があるため、最終的に被災水道事業者が当該費用を負担することとなる。現場で対応する水道事業者としては、被災者の保護を目的とした災害救助法の視点に立ち、被災状況に合わせて柔軟に対応することで、円滑な支援が行えるため、応急給水の方法に制約を持たせるべきでないと考える。
よって、地震等自然災害に対する強靱な水道施設の整備を推進するとともに、被災後の速やかな応急対策及び復興が図れるよう、ハード及びソフトの両面において災害対策に対する行財政支援等を国に対して強く要望する。
中部地方支部の名古屋市より提案理由が説明されるとともに、豊橋市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
3.防災・減災、国土強靭化のための持続的かつ安定的な行財政支援について
国においては、平成30年7月豪雨や平成30年北海道胆振東部地震等を踏まえ、全国の水道事業者を対象に、重要度の高い水道施設の災害対応状況について緊急点検が行われ、平成30年度から令和2年度の3か年で集中的に緊急対策を実施する「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」に基づき水道施設の停電・土砂災害・浸水災害対策や基幹管路等の耐震化を推進してきた。
また、令和3年度からは引き続き、これらの対策の加速化・深化等を図るため新たに策定された「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づき、水道施設における自家発電設備の整備、土砂災害・浸水災害の対策工事及び基幹管路の耐震化の加速・深化などを図り、水道施設の耐災害性強化を推進するための施設整備に対しての財政支援が行われている。
しかしながら、当該補助金及び交付金においては、従来どおり資本単価等の採択基準及び交付対象事業が付されていることから、緊急対策事業を実施するにあたり、この基準等を満たさないと補助対象とならないことに加え、5か年という期間の限られた財政措置であることから十分に事業が進まないことも懸念される。
よって、我が国全体の水道の防災・減災、国土強靱化を図るため、技術的な考え方の整理を行うとともに、持続的かつ安定的な行財政支援及び採択基準の緩和等適用要件の拡大を国に対して強く要望する。
中部地方支部の名古屋市より提案理由が説明されるとともに、豊橋市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
東日本大震災の影響により電力会社の電力供給力が低下し、平成23年の夏季は電気事業法第27条に基づく電力使用制限令が実施され、平成24年の夏季にも計画停電が準備されるなど、関係する水道事業者においては、自家発電設備の増強運転、ポンプ送水量の減量など、受電量を減らすため、様々な厳しい対応が求められた。併せて、浄水場で使用する薬品の多くは、塩化ナトリウムの電気分解等により製造されており、その製造にも安定的な電力供給は不可欠である。
水道は、国民の日常生活及び社会経済活動の安定と発展を支える基盤として欠くことのできないものであり、計画停電・電力使用制限の実施、また、自然災害等に起因する大規模停電は、水道水の安定供給に甚大な影響を及ぼすものである。
また、自家発電設備用燃料に関して、東日本大震災時にはその調達に苦労した事例が多く、調達経路の確保が必要となるが、民間企業等との交渉などは水道事業者単独での対応は困難であることから、関係機関に対する国からの指導等が必要である。
さらに、近年の電気料金の値上げに加え、平成28年10月から再生可能エネルギー発電促進賦課金減免制度が見直され、減免水準が段階的に引き下げられた。
これらにより、厳しい水道事業財政がさらに圧迫されることとなり、将来的には、増加した負担を水道料金へ転嫁するに至ることも考えられ、国民生活や地域経済に大きな影響を及ぼしかねない。
よって、安全で安定した水道水の供給を持続するため、水道事業における電力確保対策等を国に対して強く要望する。
中部地方支部の名古屋市より提案理由が説明されるとともに、豊橋市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
(新型コロナウイルス感染症関係)
5.新型コロナウイルス感染症による影響に係る水道事業経営への支援について
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、国から「緊急事態宣言」が発出され、商業施設や宿泊施設を中心とした民間企業等では臨時休業や営業時間の短縮等に努めてきたところである。こうした社会経済活動の停滞に伴い、各水道事業者の水道料金収入は大きく減少し、事業経営への影響は避けられない状況である。
こうした中、国からは当面の資金繰り支援として「公営企業における特別減収対策企業債」の発行を措置することが示されたが、当該企業債の発行は、資金不足が見込まれる場合に限定されている。また、水道事業者が水道料金を減免する場合、一般会計等から公営企業会計への繰出に対して「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の対象とすることが示されたが、今般の社会経済活動の停滞等に伴う水道料金収入の減少は、水道事業者の責によらない災禍であり、水道事業者による経営努力の範疇を超えている。
加えて、水道料金の減免措置を行った結果、料金回収率の下がった水道事業者に対して、生活基盤施設耐震化等交付金等の採択基準から外すことなく、本来どおり交付を受けられるよう採択基準を緩和するなど、現状の交付金制度についても柔軟な対応が求められる。
よって、今後、影響の長期化が見込まれる中で、水道事業を安定的に運営するため、新型コロナウイルス感染症による影響に係る水道事業への適切な支援を国に対して強く要望する。
関東地方支部の横浜市より提案理由が説明されるとともに、大津市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
水道事業者は、安全で良質な水道水を安定的に供給するため、より信頼性の高い水道の整備・運営に努めているところである。
特に、地震等の災害に対して強靭な水道施設を整備するため、耐震化の推進及び老朽施設の更新・再構築に全力を傾注しているところであり、加えて、水道を取り巻く環境の変化や一層多様化する水道使用者のニーズへの対応が求められている。
また、病原微生物・有害化学物質等の新たな水質問題に対応した水質管理体制の強化、施設の整備、並びに安定的な水源の確保への取組を実施することが、喫緊の課題となっている。
さらに、人口減少に伴う料金収入の減収による収益構造の悪化や水道事業に携わる職員数が減少する中、改正水道法を踏まえ、水道の基盤強化が求められている。
これらの事業の推進並びに課題の解決には多額の資金が必要であり、国の持続的かつ安定的な財政支援が不可欠である。
よって、これらの事業の円滑かつ確実な推進に向けて、水道事業に対する財政予算を十分に確保するとともに、支援の拡充及び要件の緩和等を国に対して強く要望する。
関西地方支部の大阪広域水道企業団より提案理由が説明されるとともに、大津市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
7.水道施設の更新・再構築事業に対する新たな財政支援体制等の確立について
水道事業者は、これまで増加する水需要に対応し、安全で安定した水道水の供給を確保するため、施設能力の増強及び基幹施設の整備を進めてきた。
これら施設には、水需要が急増した昭和30年代から40年代にかけて建設されたものが多く、現在では、建設後相当年数を経過し、老朽化が進んでいることから、その多くが更新の時期を迎えている。
更新・再構築に当たっては、人口減少等による水需要の減少を踏まえた施設規模の適正化、地震等の自然災害に対して強靱な水道施設の整備、病原微生物・有害化学物質等の新たな水質問題に対応した水質管理体制の強化や高度浄水施設の整備など、緊急かつ重要な課題への対応に加え、改正水道法を踏まえ、水道の基盤強化が求められている。
しかしながら、これら課題等の対応を踏まえた施設の長寿命化事業、更新・再構築事業、並びに広域連携による施設の統廃合とこれに併せたバックアップ機能強化を図る事業等には、莫大な事業費を要する一方で、直接料金収入の増加につながらないため、その資金を水道事業者が独自で負担することは、事業経営に及ぼす影響も大きく、老朽化した水道施設の更新・再構築等を早急に推進することは極めて困難な状況となっている。
また、令和2年度には生活基盤施設耐震化等交付金において、事業の縮小に伴う施設の統合整備を行う水道施設再編推進事業が創設されたが、対象事業は、限定的なものである。
さらに、既存施設の共同化において、補助対象財産の共同化にあたって施設の有償譲渡や有償貸付等を行う場合には、各省庁の財産処分規定に基づき補助金等の国庫納付が必要となり、施設の再編成による広域連携の推進に影響を及ぼしかねない。
よって、水道施設の更新・再構築事業に対する新たな財政支援体制等の確立を国に対して強く要望する。
関西地方支部の大阪広域水道企業団より提案理由が説明されるとともに、大津市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
統合により上水道事業が負担することとなる旧簡易水道施設の整備費等について、引き続き簡易水道事業繰出基準と同等の繰出基準を適用する等、必要な財政支援を図るほか、次の事項を実現すること。
①統合前の簡易水道の建設改良に要する繰出金について、旧簡易水道事業債の元利償還金に係る交付税措置は、臨時措置分も含めて統合後6年目以降も減額することなく継続し、従前の交付税の水準を将来にわたって維持する。
②旧簡易水道事業の高料金対策に要する繰出金については、統合後6年目以降も減額することなく継続され、11年目以降も継続する。
③簡易水道等施設整備費の採択基準の緩和及び補助率の引き上げを図る。
④旧簡易水道事業区域で実施する建設改良事業に充てる企業債元利償還金の2分の1が地方公営企業繰出制度の対象となったが、この繰出しに対する財源は一般財源と特別交付税であり、設置自治体の財政負担増大が懸念されることから、負担軽減のための制度改善を行う。
簡易水道事業の多くは、過疎地域や中山間地域・離島など地理的条件から施設の効率化には限界があり、また、既存施設の老朽化や水源の枯渇、水質悪化等の問題も山積し、運営基盤は脆弱なものとなっている。
こうした中、国からは、既存の上水道事業の給水区域からの移動距離(道路延長距離)が原則として10km未満の地域にある簡易水道事業を統合する方向で指導がなされ、水道事業者は統合を鋭意推進しているところであるが、地理的条件から上水道への施設統合ができず、経営のみを統合するソフト統合となり、経営の効率化や運営基盤の強化等につながらない状況もある。
さらに、簡易水道事業の多くは、国の財政支援や一般会計からの繰入れ、簡易水道事業債等を主な財源としてかろうじて収支均衡を保っており、こうした簡易水道事業を統合することは、独立採算制を基本としている上水道事業の健全な経営に支障を来す恐れがある。
よって、上水道事業及び簡易水道事業の健全な経営を図るため、簡易水道事業統合等に対する財政支援を国に対して強く要望する。
関西地方支部の大阪広域水道企業団より提案理由が説明されるとともに、大津市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
9.再生可能エネルギー・省エネルギー設備の導入促進に向けた柔軟な制度運用ついて
環境省では、平成25年度から二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の交付を行っており、その補助対象事業には、厚生労働省連携事業「上水道システムにおける省CO2促進モデル事業」として再生可能エネルギー・省エネルギーに係る施設等を整備する場合に補助金を交付している。
この補助金は、非営利法人が補助事業者(執行団体)として環境省から一旦交付を受け、補助事業者(執行団体)が設置する委員会において審査を行い、エネルギー起源二酸化炭素の排出抑制のための技術等を導入する事業に対して交付される仕組みとなっているが、その審査の基準については、前年度の審査項目及び観点のみが示され、採択条件については不明確なものとなっている。
また、単年度事業では、契約手続きや事業の工期等を考慮した場合、補助金の交付決定から事業を完了させるまでの期間が約5~6か月と短期間になることから、補助金を断念せざるを得ないこともある。
さらには、2か年の事業の場合、1年目に出来高のないものは補助対象として認められないなど、制約が多い制度運用となっている。
加えて、近年はPPP手法の導入による民間企業のノウハウを活用した浄水場等の更新を行う事例が増加しているが、PPP手法は複数年にわたる整備事業の工事請負契約を当初に一括して締結するため、対象となる施設・設備の工事は契約後数年を経てからとなる場合が多く、補助金の交付を受けるには課題の多い制度となっている。
水の移送等に多大なエネルギーを要する水道事業における地球温暖化対策が社会的な要請となっている一方で、水道事業者は老朽施設の更新や耐震化に多額の費用が必要となり、再生可能エネルギー・省エネルギー設備の導入まで手が回らないのが現状である。
よって、再生可能エネルギー・省エネルギー設備の導入促進に向けた柔軟な制度運用を国に対して強く要望する。
関西地方支部の大阪広域水道企業団より提案理由が説明されるとともに、大津市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
10.起債融資条件の改善及び地方公営企業繰出制度の拡充等について
起債融資条件の改善及び地方公営企業繰出制度における実効性の強化、安全対策事業、高料金対策等における繰出基準の緩和及び対象事業の拡充を図るほか、次の事項を実現すること。
①政府資金などによる安定した資金調達機能を維持するとともに、起債に係る利率の更なる引き下げを図る。
②一般会計出資債に係る地方交付税措置を拡充する。
③浄水場、配水池等の基幹水道構造物の耐震化事業について、耐用年数を経過した施設の更新・改築事業を対象とする。
④浄水場・管路等の更新事業、浄水施設覆蓋整備事業、既存施設の撤去事業並びに自己水源の一部を用水供給事業に転換するための施設整備事業を地方公営企業繰出制度の対象事業に加える。
⑤水道事業が担う水源涵養に係る取組を地方公営企業繰出制度の対象事業に加える。
⑥大規模地震や自然災害の災害復旧に要する経費を地方公営企業繰出制度の対象事業に加える。
⑦社会的配慮として実施する福祉減免に要する経費を地方公営企業繰出制度の対象事業に加える。
⑧山間部や離島などにおける小規模集落への給水に要する経費を地方公営企業繰出制度の対象事業に加える。
⑨消火栓設置に伴う水道管路の維持管理費用等について、明確な算定基準を示し、着実な一般会計からの繰出を図る。
水道事業においては、安全で良質な水道水の安定供給を確保するため、施設の建設・改良に多額の資金を必要とし、この財源の多くを起債に依存せざるを得ないことから、その元利償還金は水道財政を圧迫しており、水道事業の健全な経営に大きな影響を及ぼしていることに加え、人口減少社会においては、現行制度では自らの努力だけでは経営を維持することが困難な水道事業者が増加することが予想される。
今後も、安全で安定した水道水の供給を確保するためには、水源開発を始め、老朽化した施設の更新、再構築事業や震災対策事業の推進等、施設の整備、さらには、広域連携の推進が不可欠であり、これに要する巨額な資金もまた起債に依存せざるを得ない実状にある。
こうした中、地方公営企業繰出制度については、毎年度、総務省において、一般会計から公営企業会計への繰出に関する基本的な考え方を示し、地方公営企業法に定める経営に関する基本原則の堅持と経営基盤の強化を図ることとしている。しかしながら、この繰出基準に沿った事業に係る経費であっても、実際の繰出金の拠出は、一般会計の財政状況によって左右されることが多く、必ずしも制度の趣旨が保たれているとは言い難い状況にある。
一方、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から、平成31年4月に森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律が施行され、また、令和元年度から森林環境譲与税の地方公共団体への譲与が開始された。次世代に豊かな水源林を引き継いでいくために、水道事業の担う水源林保全への理解促進や住民参加による植林活動などの水源涵養に係る取組は、極めて公益性の高い事業であり、まさに森林環境譲与税の使途に謳われている活動内容にも通じているものがある。
また、災害復旧に係る経費について、自然災害による水道料金収入の減少や復旧経費の増加は、水道事業の経営基盤に与える影響が多大であることに加え、近年は台風や集中豪雨などによる風水害なども多発していることから、水道事業単独での経営努力により賄いきれるものではないため、災害の規模や対象となる経費を明確にした上で、当該経費の一部について一般会計等において負担すべきであると考える。
さらに、福祉減免に係る経費について、地方公共団体における社会配慮として実施する福祉施策等である水道料金の低料金制度、減免措置などは、地域の特性に応じて一般会計等が実施する福祉施策にほかならず、独立採算を旨とする公営企業の水道料金収入で負担する性質のものではないことから、当該経費の全部について一般会計等において負担すべきであると考える。
加えて、小規模集落への給水に係る経費について、近年、多くの地域において集落の小規模化や高齢化の進行が見られる中、少数の需要者のために、多大な水道施設整備・更新費用をかけることは、費用対効果の面からも水道事業者にとって大きな負担となっていることから、当該地域への給水に必要な水道施設の建設改良事業に要する経費の一部について一般会計等において負担すべきであると考える。
よって、水道事業の健全な経営を確保し、水道料金の高騰化を抑制するため、地域の実情等を踏まえ、起債の融資条件等を改善するとともに、地方公営企業繰出制度の拡充等を国等に対して強く要望する。
北海道地方支部の札幌市より提案理由が説明されるとともに、大津市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
11.公的資金補償金免除繰上償還制度及び公営企業借換債制度の復活について
水道事業者は、起債を主な財源として水道施設の整備拡充を行ってきたため、その元利償還金が水道事業にとって大きな負担となっており、特に過去に借り入れた高金利既往債が、この負担を一層大きくしている。
こうした状況の中、繰上償還については、政府資金は平成19年度から3年間、旧公営企業金融公庫資金は平成19年度から2年間、一定の経営改革を実施する地方公営企業を対象に補償金を免除する特例措置が講じられた。さらに、平成22年度から平成24年度の3年間についても制度の継続がなされ、財政上の負担軽減につながる非常に有用な制度であった。
なお、平成25年度に限り、東日本大震災の特定被災地方公共団体を対象に補償金免除繰上償還及び借換債発行ができることとされたが、対象となる資金は年利率4%以上の旧公営企業金融公庫資金のみと限定的なものであった。
また、平成30年度からは、令和3年度までの時限措置として、上下水道事業について公共施設等運営権の設定に係る実施方針条例の制定等、一定の要件を満たした地方公共団体に限り、補償金免除繰上償還が制度化されているが、これも限定的なものである。
よって、水道事業の健全経営を確保し、水道料金の高騰を抑制するため、広く活用できる公的資金補償金免除繰上償還制度及び公営企業借換債制度の復活を国に対して強く要望する。
北海道地方支部の札幌市より提案理由が説明されるとともに、大津市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
12.安定水源の確保及び水源施設における堆積土砂対策等の推進について
水道の根幹的使命の一つである安定給水確保のためには、安定した水源を担保する水源施設の存在が不可欠であるが、その建設には長期にわたる期間と多額の整備費を要する。このため、計画的かつ効率的な水源開発の推進が強く求められるとともに、整備されたダム等を良好な状態で管理運営することが必要である。
こうした中、ダム上流域においては、多くの地域で森林の荒廃が問題となるとともに、所有区分毎に管理者が混在し総合的な治山・涵養事業の実施が困難な状況にある。さらに、近年、頻発する豪雨災害により、ダムにおける堆積土砂は全国的な課題となっている。
また、水循環基本法の枠組みの中で策定される流域水循環計画の事業の推進により、適正な水循環の実現及び水資源の保全を図ることも強く求められている。
よって、安定水源の確保及び水源施設における堆積土砂対策等の推進を国に対し強く要望する。
関東地方支部の神奈川県内広域水道企業団より提案理由が説明されるとともに、東京都より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
(水源関係)
河川法では、申請者の水需要に見合った水利権が許可されるのが原則となっているが、全国的な給水人口の減少傾向、節水機器の普及や節水意識の浸透などにより給水量の減少が予想されるため、今後、水利権が見直しされることも懸念される。
許可水利権を得ている水道事業者にとって、水利権は水道事業経営の根幹をなすものであり、既得の水利権水量を安定給水のための施設整備や水運用の前提としている。
多くの水道事業者は水利権を確保するため、ダム建設等に多額の費用を投じ、それを最終的には水道使用者の料金から回収しており、水利権は、いわば水道使用者の財産とも言えるものである。
また、水利権は厳格な手続きを踏んで許可されることから、河川法に基づく水利権制度では、渇水時の特例を除いて水融通は認められていない。
地震等の災害や大規模な水質事故などの発生時には、社会経済的な損失の大きい減断水を回避するため、河川管理者においても河川法の原則の範囲で配慮がなされているところであるが、緊急時においては、特に水道事業者間における水融通が有効な方策と考えられるとともに、連絡管等により他の水道事業者と接続されている場合、減量または廃止される水利権の一部を他の水道事業者が活用することが可能となれば、水質リスクの低減、水量の安定化、運用の効率化においても有効な方策になり得る。
さらに、広域連携の一施策としての施設の共同設置・共同利用・上流取水の促進という観点において、施設規模の縮小や統廃合に伴い、同施設に水利権の減量又は廃止が生じる場合に、その減量等される水利権を他の水道事業者が活用することができれば、広域化の推進による経営基盤強化への効果が期待できる。
加えて、広域連携の形態が多様化することに関連して、水利権の問題も複雑化し、水道法に基づく事業認可や河川法に基づく流水の占用許可等、給水量及び給水区域と水利権等の関係等の諸課題も発生してくることが予想される。
よって、水利権制度の柔軟な運用を国に対して強く要望する。
関東地方支部の神奈川県内広域水道企業団より提案理由が説明されるとともに、東京都より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
14.既存ダムの洪水調節機能強化に向けた基本方針への対応について
令和元年東日本台風等を踏まえ、水害の激甚化、治水対策の緊要性、ダム整備の地理的な制約等を勘案し、緊急時において既存ダムの有効貯水容量を洪水調節に最大限活用できるよう、関係省庁の密接な連携の下、速やかに必要な措置を講じることとされ、「既存ダムの洪水調節機能の強化に向けた基本方針(令和元年12月12日 以下、「基本方針」という。)」が定められた。この基本方針に基づき、全ての既存ダムを対象に検証しつつ、治水協定の締結、工程表等の各施策について具体的な検討が行われ、国管理の一級水系について、令和2年の出水期から新たな運用を開始するとともに、都道府県管理の二級水系についても、令和2年度より一級水系の取組を都道府県に展開し、緊要性等に応じて順次実行していくこととされたところである。運用方法などの基本的事項については、国土交通省の事前放流ガイドライン(令和3年7月)に定められており、事前放流による利水容量が従前と同等に回復しない場合で、取水制限の新たな発生や、その期間の延伸及び取水制限率の増加に伴い発生する利水事業者の広報等活動費用及び給水車出動等対策費用の増額分が補填されることになっているが、これらの対応は水道用水供給事業者から受水する水道事業者も行うことになる。
水道事業者及び水道用水供給事業者は、これまでも水源確保のためダム開発事業に参画し、安定給水の確保に努めてきた結果、水道水が国民生活のみならず、社会経済活動を支える重要インフラとして広く定着してきたところである。
近年、気候変動の影響による水害の激甚化により、流域に暮らす方々の安全確保が急務となってきている。一方で、降雨の期間が集中するなどして、河川の利水安全度の低下が見られるなど、ダムの貯留機能を最大限に活用した利水運用も余儀なくされているのが現状といえる。
こうしたことから、治水協定や事前放流ガイドラインについて、損失補填や費用負担等、改善に向けた協議の場を関係省庁等と行えるよう調整するとともに、人命優先の観点から洪水調節機能の拡大に最大限協力しつつも、事前放流により水不足等の実害が生じないよう、安定給水確保のための基本方針への対応について国に対して強く要望する。
関東地方支部の神奈川県内広域水道企業団より提案理由が説明されるとともに、東京都より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
15.特定多目的ダム供用開始後に要する利水者負担額の軽減について
多くの水道事業者では、特定多目的ダム建設事業に参画し、安定的に取水するための許可水利権を取得している。
しかしながら、特定多目的ダム事業の参画には、膨大な建設費用の負担に加え、ダム完成後は特定多目的ダム法第33条の規定に基づきダムの維持管理等に要する負担金及び同法第35条に基づきダムの所在市町村への交付金を支払うための納付金の負担を強いられるため、厳しい水道事業財政をさらに圧迫するものとなっている。
よって、特定多目的ダム供用開始後に要する利水者負担額の軽減を国に対して強く要望する。
関東地方支部の神奈川県内広域水道企業団より提案理由が説明されるとともに、東京都より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
16.水道水源における水質保全対策及び水質事故の発生防止の強化等について
水道事業者等は、常に安全で良質な水の安定供給という使命を果たすため、水道水源の水質保全や水質事故の発生防止について、日頃より細心の注意を払っているが、水源で水質汚染事故が発生すれば、取水停止や水源系統切替え、さらには摂取制限や給水停止等を余儀なくされる場合もあり、住民の生活に多大な影響を及ぼすことが考えられる。
これまで、水道水の水質基準の改正はもとより、環境基準、排水基準などが強化され、水道水源の水質保全に関する法令が整備された。しかし、水源水質汚染事故は依然として発生しており、生活雑排水の流入や富栄養化に伴うかび臭、工場排水の影響による異臭味の発生、さらには、規制対象外の物質が浄水処理工程で水道水質基準物質に変化するなど多大な影響を被っている状況にある。また、水道水源地域に産業廃棄物処分場が進出しており、水道原水の汚染や水源涵養地の保水力低下が懸念されている。搬入される廃棄物の安全性の確保や浸出水漏洩時の対策、事業廃止後の浸出水処理施設の稼働期間、PFOSやPFOA等の新たな物質が着目される中、これらは水道事業者等にとって重大な危害因子であり、浄水処理に多大な影響を与えるだけでなく、水道水に対する信頼性の低下や処理コストの増加などの大きな要因となっている。
水源水質の問題は広域的、専門的な内容であることから、水道事業者等が安全で良質な水道水を安定的に供給するためには、国が水源保全について一層の規制強化を図るとともに、水質事故の発生防止や水源の水質改善に対してより具体的な対策を実施することが必要である。
また、海水淡水化施設を導入している水道事業者等にとって、ホウ素及びその化合物の水道水質基準値は、浄水方法、施設の運用方法及び浄水コストに大きく影響する要因となることから、常に最新の知見及び安全性確保の視点を持ちつつ見直しを図ることが望まれる。
よって、水道水源における水質保全対策及び水質事故の発生防止の強化等を国に対して強く要望する。
九州地方支部の北九州市より提案理由が説明されるとともに、東京都より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
(水源関係)
17.地下水利用等による専用水道に係る法整備及び対応について
近年、水使用の合理化・経済性の観点から、地下水等の膜処理水と水道事業者が供給する水道水とを混合して給水する、あるいは、通常は地下水等の膜処理水を給水し、そのバックアップ用として水道水を使用するといった専用水道の設置が全国的かつ急速に拡大している。
しかしながら、このような専用水道への移行は、地下水等の膜処理水と水道水との混合給水における水質管理の実態が不明瞭であるほか、水道水をバックアップ用として使用する専用水道の場合、通常時は水道水を使用しないことから配水管内に停滞水が発生しやすく、使用時に停滞水が専用水道に混入する場合がある。
また、専用水道が水道水の使用を急激に増やした時に、配水管路内の圧力変動により、他の水道使用者に赤水などの異常が発生する恐れがあるという課題も抱えており、衛生上の観点からも看過できない状況にある。
一方、こうした専用水道による地下水等の利用拡大がもたらす環境への影響も懸念されるところであり、これまでにも地下水の過剰なくみ上げによる地盤沈下を防止するために、工業用地下水のくみ上げ規制などが実施されてきた経緯がある。
今後、専用水道による地下水利用がさらに拡大した場合には、再び地盤沈下が進行することも考えられ、環境にもたらす影響が懸念されることから、これを防止するとともに、公共性の高い貴重な資源である地下水の保全を図るため、地下水の公的な管理に係る取組をより一層推進していく必要がある。
併せて、このような専用水道の水源である地下水は、国や自治体等の財政投資や使用者の負担によって整備された雨水浸透施設等による地下水涵養の取組によってもたらされているものであり、極めて公益的なものであることから、一部の民間企業や特定需要者の利益のために利用されることは、国民の共有財産である地下水の利用の観点から公平性を欠くものである。
さらに、地下水利用専用水道の導入によって、水道の使用量が非常に少なくなった場合には、水道施設に係る固定費の多くが未回収となり、その減収分が他の水道使用者に転嫁される懸念がある。
よって、地下水利用等による専用水道に係る法整備及び対応を国に対して強く要望する。
中国四国地方支部の岡山市より提案理由が説明されるとともに、旭川市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
近年、水道事業者においては、高度成長期に埋設された多くの配水管の老朽化が進み、本格的な更新時期を迎えている。
更新に伴い布設する配水管については、東日本大震災の教訓を踏まえ、耐震性・耐久性に優れた新型管種を選択する水道事業者が多い中、現行の地方公営企業法施行規則では、配水管の耐用年数は一律40年と規定されている。
しかしながら、近年の技術進歩により配水管の耐久性は大きく向上し、特にダクタイル鋳鉄管では100年という長寿命を目指した新製品も開発されており、一律40年と規定する現行の地方公営企業法施行規則は実態に沿わないものとなっている。
また、配水管以外の水道施設についても、ポンプ設備は15年、監視制御設備等の計測設備は10年と規定されているが、これらについても技術レベルの向上や維持管理の適正化を踏まえた見直しを検討すべき時期に来ていると考えられる。
耐用年数は、水道事業の費用構成の中で大きな割合を占める減価償却費に関係し、水道使用者から回収する水道料金の算定にも大きく影響を与えるものである。
よって、配水管等の耐用年数の見直しを国に対して強く要望する。
中国四国地方支部の岡山市より提案理由が説明されるとともに、旭川市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
19.電磁式を含む水道メーターの検定有効期間の見直しについて
水道事業者においては、平成23年4月から施行された計量法省令に基づき、計量精度の向上等を踏まえた新基準に対応した水道メーターへ平成30年度末までに順次移行した。
新基準に対応した電磁式を含む水道メーターは、材質も環境に配慮したものへと改善されており、長期間の使用に支障はほとんど見られない状況である。
しかしながら、現行の計量法に定める検定有効期間は従前のまま8年となっている。
検定有効期間に基づく電磁式を含む水道メーターの購入及び取替に要する費用は、水道財政において大きな負担となっている。
よって、電磁式を含む水道メーターの検定有効期間の見直しを国に対して強く要望する。
中国四国地方支部の岡山市より提案理由が説明されるとともに、旭川市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
20.塗膜に含まれる低濃度ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の処理等について
平成31年3月28日付けで環境省より「低濃度ポリ塩化ビフェニル汚染物の該当性判断基準について」において、塗膜くずに含まれるPCBの含有濃度が0.5mg/kg以下となる場合は、低濃度PCB汚染物に該当しないと判断する旨の通知があった。
一方、この含有量を超える低濃度PCB廃棄物は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法により政令で定める期間(令和9年3月31日)までの処分が義務付けられている。
今後の全国的なPCB含有塗膜の状況把握の調査結果等によっては、全ての対象塗膜の期限内での処分の可否、また、処分場が限定されるうえに処理費用も高額であること等が、大きな課題となることが懸念される。
さらに、塗膜除去を確実かつ適正に行う必要があるため、工法、工期に影響が生じることにより工事費も高額となる。
よって、塗膜に含まれる低濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理等に関する検討及び財政支援措置等を国に対し強く要望する。
中国四国地方支部の岡山市より提案理由が説明されるとともに、旭川市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
21.管路更新時の既設管取扱に係る道路法第40条ただし書の運用について
道路法第40条第1項のただし書の適用範囲において、国土強靱化基本計画に掲げる「緊急的かつ重点的に進める国の施策にかかわる事業」に係る既設水道管の取扱いについて、道路管理者の裁量の範囲である旨明確に示すこと。
水道は国民生活に欠かすことのできない重要なインフラであり、国が策定した、防災・減災等に資する国土強靭化基本計画の見直しにおいて、重点化すべきプログラムに「上水道の長期間供給停止」が追加された。その主要施策の一つに「水道施設の耐震化の推進」が位置づけられており、全国の水道事業者においても優先すべき課題として、精力的に耐震化に取り組んでいるところである。
こうした中、水道の普及率が飛躍的に向上した高度経済成長期に整備された管路が、順次更新時期を迎えており、水需要と料金収入が減少する厳しい事業環境にあっては、管路の更新に要する財政負担の増大が、特に中小の水道事業者にとって重い負担となっている。
これに加え、昨今改正された道路法において、管路等を更新した際に不要となった占用物の取扱いが強化され、工期の長期化に伴う受注者の施工体制に影響が及ぶことが想定されるとともに、既設管の撤去に要する費用も重い負担となる。
南海トラフ地震や首都直下地震の切迫性が指摘されるなど、水道管路の耐震化を早急に進めていかなければならない中で、こうした課題が、耐震化の促進を阻害する要因ともなっている。
ついては、道路法第40条の趣旨を十分に踏まえた上で、既設管は十分な強度があり陥没等のリスクも低いことから、同法第40条第1項のただし書の適用範囲において、国土強靭化基本計画に掲げる「緊急的かつ重点的に進める国の施策にかかわる事業」に係る既設水道管の取扱いについては、道路管理者の裁量の範囲である旨明確に示すことを国に対して強く要望する。
中国四国地方支部の岡山市より提案理由が説明されるとともに、旭川市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
道路事業における公共工事に伴う道路掘削等が行われる際に、その施工区域内に埋設されている水道管等の施設が工事の支障となった場合、当該施設の部分移設は全額補償となるが、全部移設については経年による減耗相当額が補償対象とならない。また、移設に伴い耐震性を有する管種へ変更する場合でも、同じ管種での補償となっている等、支障移設に伴う費用が水道事業者にとって大きな負担となっている。
さらに、道路法に定められた道路占用者に係る占用物件の維持管理業務に必要な費用についても、水道事業者にとって大きな負担となっている。
よって、公共工事における支障移設工事の補償基準の緩和及び道路占用している水道管路の維持管理に必要な費用に対する財政支援を国に対して強く要望する。
中国四国地方支部の岡山市より提案理由が説明されるとともに、旭川市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。
23.新型コロナワクチン優先接種の拡大と職域接種要件の緩和について
水道事業は、住民生活と経済活動にとって最も重要なライフラインである。水道事業者とそこで働くすべての従事者は、自らエッセンシャルワーカーとしての自覚と責任を持って、コロナ禍においても決して途切れさせてはならないという使命のもと水道事業の継続に努めているところである。
新型コロナウイルスの感染防止対策にあたっては、強化、徹底に努めているが、昨今は感染力が強い新型コロナウイルス変異株が流行するなど、新規感染者が再び増加している状況を踏まえると対応が長期に及ぶことが懸念されている。
新型コロナワクチンの接種順位については、①医療従事者等、②高齢者、③高齢者以外で基礎疾患を有する者及び高齢者施設等の従事者とされているが、浄水場等の職員が感染し、大規模なクラスターが発生した場合、水道水の供給に甚大な影響を与えることになる。
加えて、新型コロナワクチン接種を加速させるため、1,000人以上で実施することを要件に職域接種の取組が進められているが、全国の多くの水道事業者では職員数が1,000人を下回る状況であり、また、当該理由により職域接種を受けられない近隣の水道事業者との合同接種の取組も困難な状況にある。
よって、水道水の安定給水の確保に向け、新型コロナワクチン優先接種の拡大と職域接種要件の緩和を国に対して強く要望する。
中国四国地方支部の岡山市より提案理由が説明されるとともに、旭川市より関係当局に強く陳情すべきと動議が提出され、この提案を採択することに加え、陳情の時期や方法等については、運営会議に付託する決議がされた。