東日本大震災から10年の歩み
宮城県支部 事例紹介
①災害時給水栓_地上型(仙台市・H25年度~整備)
東日本大震災時に、約23万戸が断水し、応急給水所に給水を受ける方々の長蛇の列を生じさせた反省から、地域の方々が自主的に給水所を開設し利用できる「災害時給水栓(地上型)」を平成25年度から整備しています。主な特徴としては次のとおりです。
- 指定避難所となる、全市立小・中・高等学校(非常用飲料水貯水槽を設置している学校を除く。)177校へ整備することとし、令和3年10月現在150校に整備済みです。
- 市内で震度6弱以上の地震が発生した場合、避難所設営担当の方々により設営されます。
- 操作が簡単で、学校の防災備蓄倉庫などに保管している給水ホースや仮設給水蛇口を接続することにより、誰でも給水所の設営を行うことができます。
- ポンプなどの動力を必要としないことから停電の影響を受けず、付近の水道管や家庭の給水管が破損した場合でも、災害時給水栓が接続されている水道管の水圧が確保される限り使用できます。
- 貯水する施設ではありませんので、皆さまへ給水量の制限を行うことはありません。
- YouTubeで操作方法動画を公開しています。
②水道局本庁舎止水板及び防水扉(仙台市・R3年度整備)
当庁舎は、一級河川の名取川に近接しており、最大浸水深0.5m~3.0mの浸水区域に指定されております。
万一被災しても在庁者の安全確保と業務継続が可能な災害に強い庁舎の構築に向け、令和3年6月に止水板及び止水扉、防水擁壁を設置して浸水対策を講じました。
また、ソフト面では、在庁職員等による止水板設置研修を令和3年7月に実施するなど防災に取り組んでおります。
③応急給水設備(石巻地方広域水道企業団・H29年度整備)
東日本大震災により被災した主要浄水場の一つであった蛇田浄水場の移転復旧事業に併せ,移転先の須江山浄水場内に整備した給水車等への注水設備です。
従来は地上式消火栓から1台ずつの注水に限られましたが,この設備により2台同時の注水が可能,注水後はそのまま設備を通り抜け,場内の通行に混乱を生じさせないような工夫もあります。
また,注水は上部のほか側面からの対応も可能とし,配管口径も約80mmを確保,比較的短時間で注水を完了させることで,より効率的な応急給水を実現させます。
④本吉町新南明戸水源(気仙沼市・R2年度整備)
東日本大震災の津波により被災した本吉町新南明戸水源は、河川、道路、圃場などの周辺の復旧事業と海岸や河川の防潮堤整備の進捗に合わせて、当該施設の復旧工事を実施しました。取水施設は、防水工等の津波対策を講じて従前の位置に復旧しましたが、導水施設は、従前の位置より距離で160m内陸側に移動させ、東日本大震災の津波の浸水高に余裕高(1m)を確保した高い位置に再建し、安全で安定した稼働が継続できる施設として復旧しました。
⑤応急仮設給水槽(塩竈市・H27~29年度整備)
東日本大震災時の応急給水では、給水車での直接給水を実施しましたが、給水箇所への巡回に時間を要しました。その経験から、より迅速で効率の良い応急給水を行うため、学校などの避難所や応急給水箇所へ組立型の仮設給水槽を整備しました。
また、避難所を担当する職員や、避難された方でも組立ができるよう、市の総合防災訓練や町内会の防災訓練の機会を利用し、組立訓練も実施しています。
⑥新田(にった)配水池(登米市・H26~28年度整備)
東日本大震災においては、登米市の水道施設も甚大な被害を受け、特に平成23年4月7日の最大余震により基幹となる迫川水管橋(φ600㎜)が被災し、市の西部地区への水道水の供給が出来なくなり断水が長期化しました。
また、管網計算の結果からも、迫川水管橋が被災した場合には、市の東部にある保呂羽(ほろわ)浄水場からの水運用が出来なくなるという結果となりました。更に、浄水場からの距離も含めて考えると、市の西部地区には十分な配水池容量を有しておらず、西部地区での水道水の確保が喫緊の課題となりました。
このことから、同様の災害時においても水道水の供給の確保を目的として、新田配水池を整備したものです。
⑦下り松(さがりまつ)ポンプ場(登米市・H26~30年度整備)
保呂羽(ほろわ)浄水場では、北上川に設けた下り松(さがりまつ)取水塔から、標高97mの保呂羽浄水場へ特殊な水中ポンプにより直接取水していました。
東日本大震災の本震(平成23年3月11日)及び平成23年4月7日の最大余震時において稼働していたポンプが被災し、5月と8月に故障したことにより、合せて3台のポンプを修理することとなりました。この間、必要な取水量が確保できずに、浄水場から遠方の市西部地区において断水となり、多くの住民に影響を及ぼすこととなりました。
このことから、安定した取水の確保を目的として、取水塔に低揚程の汎用性の高い水中ポンプを設置し、中間ポンプ場施設で受けた原水を高揚程で汎用性の高いポンプで浄水場へ送る下り松ポンプ場を整備したものです。
⑧取水井、電気・計装施設(南三陸町・H29、R3年度整備)
平成23年に発生した東日本大震災の津波被害を教訓に、震災後の水道施設は津波対策として取水井の上部をコンクリート張りとして保護することや、電気・計装施設をピロティ形式の2階に整備するなど、安全性を高める対策に取り組んでいます。